Geffen Records 1986
8年周期でアルバムを発表する超マイペースバンド「BOSTON」。
と言ってもトム・ショルツのワンマンプロジェクトと言ってもいいくらい。
1976年のデビュー作「BOSTON〜幻想飛行〜」、2nd「DON'T LOOK BACK〜新惑星着陸〜(1978年)」と立て続けに大ヒットを飛ばしてきた彼らですが、この3rdになる「THIRD STAGE」は2ndから8年経った1986年にリリースされました。
当然レコード会社から訴えられました。
完璧主義を貫くトム・ショルツ。
8年もの間、自宅のスタジオでこのアルバムを作り続けていました。
8年って!
しかし、曲ばかり作っていたわけでもなく、もともとマサチューセッツ工科大学を卒業するほどの優秀な頭脳の持ち主だから、エレキギターのエフェクターなんかを作って売ってもいたそうです。
「ロックマン」というブランドで、日本の楽器店でも売ってるもの。
何という理想的な生活!こういった側面だけ見てると、好きなことだけでメシが食えてるイメージがあって実にうらやましい。
一人こもってマニアックに黙々と曲を作るアーティストと言えば、「マイク・オールドフィールド」や「エイフェックスツイン」の「リチャード・J・ジェイムス」なんかを想像してしまいますが、トム・ショルツもまさにそんな隠遁生活の似合う才能豊かなミュージシャンの一人だと言えるでしょう。
このアルバムからは第1弾シングルとして1曲目の「アマンダ」がリリースされているが、これがまた非常に美しい曲になっていてこのアルバムのトップを飾るのにふさわしい曲。
デビューからの唯一の参加メンバー「ブラッド・デルプ」のきれいなハイトーンヴォイスもまた健在。
アルバム自体はトータルコンセプトアルバム的な作りになっていて、途中に3部作からなるインストの「The Launch」や「Still in Love」のようにつなぎ的な曲を入れたりして(といっても決して手を抜いているというわけではなくクオリティは十分高い)プログレっぽいRockによる一大交響曲を成しています。
そのため、はじめから終わりまで一気に聴かせる内容(約36分)になっています。
最後はこれまた美しいバラードで幕を閉じるが、このアルバムでは終始一貫してスぺーシーというか、壮大な拡がりを意識したイメージで構成されていて、一曲一曲が実に丁寧に、しっかり時間をかけて作られている印象を受けます。
「No orchestral instruments or synthesizers were used to create the sounds」
前作同様、自信たっぷりに掲げたこのメッセージには、Rockでもここまでの壮大なシンフォニーを作ることができるんだと宣言しているようです。
だからこのアルバムを聴くときは生のオーケストラを聴くような感じになってしまい、BGMとして気楽に聴けないという欠点も持っています。
今日もボストンの交響曲第3番を椅子に座ってじっくり聴くことにします。
補足:1st.および2nd.についてはトムショルツ本人によるリマスタリングの復刻紙ジャケ仕様がSONYからリリースされていますが、本作についてはユニバーサル・ジャパンより紙ジャケ化はしてあるもののリマスタリングはなされておらず、既存のCDと同じと思われます。ただ紙ジャケの質は良いです。