Fitzbeat 1986
誰が何と言おうと、いいものはいい。
表面上のおチャラけたイメージを払拭して聴いてみてください。
何と正統派なブリティッシュ・ハードロックたることか。
LPでも昔、よく聴いていたし、正直、最近でも再びヘビロテ。
ちなみに僕のお気に入りは1曲目の「デス・ランド 」と9曲目「フロム・ヘル・ウィズ・ラヴ」。
1曲目からかっこいいリフでハードに攻めまくるがサビはメロディアス。で中間のリフがまた最高で、ツェッペリンのボンゾを意識したかのようなずらし気味のドラミングが時々顔をのぞかせつつ、曲はハイスピードで終始突き進み、そのままのテンションで2曲目「アフロディーテ」へ。
このアルバムでは個性的な佳曲「モアイ」。5の「悪夢の叫び」ともにダミアン浜田による曲。
今までのアルバムではダミアン浜田の作品が中心だったが、このアルバムでは曲の大半がギターのジェイル大橋の手によるもの。
結果、彼の指向が全面的に出ているアルバムと言って良く、全体的によりハードロック色が濃くなり、僕的には一番好きなアルバムになりました。
しかし彼は音楽性の違いや作品と世間の評価とのギャップに苦しみ、このアルバムを最後に聖飢魔IIを脱退することになります。
キャッツ・イン・ブーツというバンドを組み、アメリカに進出。もともとやりたかったロックンロールよりなサウンドを発表することになります。(これはこれでいいアルバム)
しかし、彼のハードロックとしてのギターパフォーマンスはすばらしいと思いますし、このアルバムではそれがいかんなく発揮されていて、このまま聖飢魔IIを続けていればこの後どうなっただろうと想像すると、少し残念な気がしてしまいます。
シングル曲のデーモン小暮による4「EL・DO・RA・DO 」5の「悪夢の叫び」を経て、LPでいうB面の最初の曲、6「魔界舞曲」よりいよいよジェイル大橋エンジン全開。
曲のタイトルに良く合う印象的なリフがかっこ良く、耳に残る。
途中でスキャットなどをはさみ、舞曲っぽく構成も少し凝ったものになっています。
7「アダムの林檎 」は聖飢魔IIのラインナップの中でも人気のある名曲で、ジェイル大橋の特徴的なスピーディーなリフと超絶的なソロに尽きるでしょう。
8「秘密の花園」はうって変わってバラード調の曲。ほんわかした雰囲気に始まって最後盛り上がって終わるというハードロックの典型的なパターン。
聖飢魔IIは以外とバラード曲に、美しく、レベルが高いものが多いと思います。
最後の「地獄への階段」もそうだが、メロディラインがとても美しく審美的です。
9「フロム・ヘル・ウィズ・ラヴ」はこのアルバムを代表する壮大な曲。アナログLP盤の歌詞カードには確か6分66秒(7分6秒ってこと)と書いてあったような。
7分かけて地獄からのメッセージが壮大に繰り広げられます。注目すべきは曲の素晴らしさもさることながら、古文のような歌詞にあります。
「主は来ませり 真(まこと)の 主は来ませりこの地に あくがりたる 諸人(もろびと) こぞりて迎えたまえ」
日本のロック・ポップミュージックにおいてこのような古い言葉をかくも印象的にうまく曲に溶け込ませることに成功した曲はいったいいくつあるというのでしょうか。
単なるメディア向けのパフォーマンスではなく、聖飢魔IIの持つイメージを見事作品に結実させた好例ではないでしょうか。
最後の10「地獄への階段」はかのツェッペリンの名曲「天国への階段」からの引用ですが、単純にコードをパクったのではなく、全く別の美しい作品に昇華されています。
とてもいい曲で傑作だと思いますが、こんな美しい曲をわずか数分で切り上げてしまうとは…。
ちなみにこの曲は「完結編」として再編集したものが「愛と虐殺の日々(歴代小教典大全)」というアルバムに収録されているのでそちらをチェックしてください。
このアルバムはこの頃の聖飢魔IIの絶頂ぶりを物語るものであり、ジェイル大橋の最高のパフォーマンスが表現されたアルバムであろうと思います。
1999年にいったん解散した聖飢魔IIであったがその後再び再会、現行のメンバーに加え、何と脱退したジェイル大橋までもが合流。いろいろと確執が噂されていたが、昔と変わらないパフォーマンス、メンバーとの和やかな感じをドキュメントで見たときは何となく嬉しい気がしました。相変わらず格好良かったし…。
今後ももっと評価されていいバンド&アルバムだと思う。