EMI 1984
リマールが抜けて4人になってリリースされたカジャグーグーの2nd.アルバム。
中学生の頃、友人からカセットテープに録音して渡され、初めて聴いた洋楽アルバムのひとつで、当時はこのアルバムの#1「The Lion's Mouth」が大好きでした。
最初の導入フレーズとブラスの音がすごく気に入り、サビと間奏に魅せられたものです。
とにかくこればかり何度も聴いていたような気がします。
今でもこの曲は好きです。
デビュー当初は、リマール中心のアイドルグループという感じのカジャグーグーでしたが、象徴的存在だったリマールが抜け、そのサウンドは逆に一皮もふた皮もむけた、洗練されたものになりました。もちろんセールス的には前作より落ち込み…
Bassのニックベックスがヴォーカルも兼ね、全面的にイニシアティヴをとっていますが、グループの一体感が増し、非常に聴きごたえのあるアルバムに仕上がっていると思います。
このアルバムではニックベックスのBassを聴いてください。
通常のBassに加え、スティック(注1)という珍しい楽器を駆使して、縦横無尽に繰り広げられるそのBassの演奏を中心にした曲調は聴き応えがあります。(スティックによる演奏は#1、#5、#9などで聴けます)
この演奏がこのアルバムの全体のグルーヴ感や、質そのものをかなり押し上げ、アルバムの完成度を高めるのに成功しているように思われます。
アイドルバンドと簡単にはかたづけられない十分に練られた充実した演奏を聴くことができると思います。
このアルバムの真骨頂はLPでいうB面の2曲目、タイトル曲にあたる「Islands」からラストの「The Loop」までの一連の4曲。
ゆったりとしたグルーヴにのせてそれぞれの演奏がバランス良く配置されていて、聴いていて心地よくなります。これらの曲には大ヒットした「君はToo Shy」の面影はもはやなく、アイドルバンドといったイメージもない立派なセッショングループといってもいいくらいの濃密な楽曲と演奏が聴かれます。特に最後の曲などはホントにカジャグーグーなの?と思っていた程。
昔はなかなか理解できずにいた妙に大人っぽいサウンドも今となってはすっかり愛聴曲になっています。
リマールの呪縛?から解き放たれたカジャグーグはニックベックスを中心にニューロマンティックスでも人気アイドルグループでもないひとつのれっきとした「アーティスト」になりました。もちろんセールスからも少し遠ざかることになりますが、長く愛されるべき名盤が残されました。
このアルバムはもっと評価されていいと思います。
リマールで売れたイメージが強いせいか、このアルバムの評価は以前として低いような気がします。(日本だけ?)
このアルバムは長い間CD化されておらず、2004年になってようやくリリースされました(7曲のボーナストラック入り)。
私だけでなくかなりの多くの人がCD化を待ち続けていたのではないでしょうか。
CDショップでたまたま見つけた時は小躍りしてしまったほどです。
次は紙ジャケ&リマスターで再発頼みます。
追記:7曲のボーナストラックのうち#11「The Pump Rooms of Bath」と#12「The Garden(Instrumental)」の2曲は今聴いても新鮮で聴き応えのあるいい曲でオススメ!
注1)スティック(チャップマン・スティック)
1970年代初頭に、アメリカのエメット・チャップマンによって発明されたエレクトリック楽器。
通常のギターの片手でフレットを押さえ、もう片方の手で弦を爪弾くという奏法と違い、フレットに対し両手で弦を叩きつけて音を出すため(タッピング)、他の弦楽器が一度に出せる音よりもはるかに多くの音を一度に奏でることができる。このため、弦楽器よりも鍵盤楽器と比較することができる。多様なメロディを一度に弾くことが可能で、多くのスティック・プレイヤーは低音、コード、メロディラインを同時に弾くことを習得している。ウィキペディアより抜粋)